プラスミドDNAの抽出方法としてよく使われるアルカリ変性法について簡単に解説した記事です。
なぜプラスミドDNAを抽出するのか?
プラスミドDNAが何かがわからない人は、こちらの記事を参考に。
3分ほどで読み終わると思います。
プラスミドDNAは、遺伝子組み換えなどに必要な物質であるため、抽出という作業が必要になってきます。
アルカリ変性法のポイント
では、本題のプラスミドDNAの抽出方法、「アルカリ変性法]について。
DNAの2本鎖は、強いアルカリを入れると2本鎖が分かれます。
普通のDNA(ゲノムDNA)は、その後、中和しても、元の状態には戻らないのですが、
プラスミドDNAは環状という単純な形で、比較的分子数が小さいものが多いのです。
そのため、中和すると元の状態にもどるか、スーパーコイルと呼ばれる状態になります。
(中和後は、元の状態が90%、スーパーコイルが10%ほど)
この性質を利用して、プラスミドDNAを抽出するのが、「アルカリ変性法」です。
細胞はざっくりいうと、
・タンパク質
・普通のDNA(ゲノムDNA)
・プラスミドDNA
・RNA
からなっています。
この4つを分離していきましょう。
具体的な手順
まず、前段階として、液体培地で抽出したいプラスミドDNAを持った大腸菌を培養しておきます。
「アルカリ変性法」
①細胞懸濁
細胞懸濁は、アルカリ変性法以外でも、よく行われる手順です。
細胞懸濁液というものを入れ、激しく混ぜます。
激しく混ぜることで、細胞同士をばらばらにし、その後の操作が有効に行えるようになります。
細胞懸濁液の中に含まれる物質と、その作用
- Tris…緩衝液。細胞が壊れないように、最適なpHに保つ。
- EDTA…DNAの分解を阻止する。DNAはMg2+などの金属イオンをきっかけとして分解されることがあるため、それをふせぐために金属イオンとくっつく。
- グルコース…DNAを保護する
- RNAase…RNA分解酵素
②アルカリSDS液を入れる
DNAは2本鎖でした。
アルカリSDS液を入れることで2本鎖を離します。
アルカリSDS液の中に含まれる物質とその作用
- SDS…タンパク質を変性させる、細胞膜を溶かす
- NaOH…強アルカリ。ゲノムDNAやプラスミドDNAの2本鎖を離す。
③酢酸アンモニウムで中和
アルカリ性になった液を酢酸アンモニウムを使い、中和します。
中和することで、ゲノムDNAは2本鎖のままですが、プラスミドDNAは、元に戻るか、スーパーコイルと呼ばれる状態になるのでしたね。
この時、タンパク質が沈殿するのですが、ゲノムDNAもそれに絡まって一緒に沈殿してきます。
何しろ、ゲノムDNAはもともと複雑な状態で、2本鎖が分かれることで、より、複雑なぐしゃぐしゃっとした状態になっているからです。
一方、RNAは一本鎖、プラスミドDNAは分子が小さいため、水の中に残ります。
この手順によって、ゲノムDNAとタンパク質をプラスミドDNAから分離することができました。
④フェノール・クロロホルム抽出でさらに沈殿させる
この過程は、研究室によっては、行わないところもあるそうです。
先ほど、中和の段階でタンパク質とDNAが沈殿していましたが、より精密にタンパク質とDNAを取り除きます。
使うのは、フェノール・クロロホルム抽出という方法です。
液に、フェノールとクロロホルムを入れます。
- フェノール…タンパク質を変性させる、タンパク質を溶けにくくさせる(不溶化)
- クロロホルム…分離をよくする
下から、フェノール・クロロホルム、タンパク質とそれに絡まったゲノムDNA、水(RNAやプラスミドDNA)を含むといったように分かれます。
この手順によって、ゲノムDNAとタンパク質をより精密にプラスミドDNAから分離することができました。
あとは、RNAをプラスミドDNAと分けなければなりません。
⑤イソプロパノールでプラスミドDNAを沈殿させる
分離した水層を取り出し、イソプロパノールを入れます。
イソプロパノールは、水に溶けますが、DNAは溶けないという性質を持っています。
RNAはイソプロパノールには溶けることができます。
RNAとプラスミドDNAが混ざった液にイソプロパノールをゆっくりと注ぐことで、水にだんだんとイソプロパノールが溶け、溶けきれなくなったプラスミドDNAが沈殿します。
プラスミドDNAも、ゲノムDNAと同じく負の電荷を帯びているので、集まって沈殿しにくいのですが、その場合は、ナトリウムイオンNa+などを入れます。
⑥70%エタノールで洗う
沈殿を取り出し、70%エタノールで洗います。
沈殿には、プラスミドDNAと、入れた場合は、Na+が含まれています。
プラスミドDNAはエタノールには溶けないため、洗うことでより純粋なプラスミドDNAを抽出することができます。
以上っ
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